随分前の話なんですが、田舎の結婚式場で働いていた頃の話。
人手も足りないので、ホールと調理場の両方を手伝っていました。 
知ってる人は知ってると思うんですが、ちゃんとした料理人の包丁は、これがまあ異常に切れる切れる。 

ある日、副料理長の包丁が調理台からちょっとハミ出していたんです。
しかも刃の方が。 

その日は忙しく、ホールから応援に来た新人が慌ただしく調理場にも出入りしていたんですが、その包丁のはみ出た調理台を通り抜けて2~3秒後にすごい悲鳴があがりました。 
見ると、ホールの新人の子の手首から血が静かにトロトロ~ポタポタ~って感じで床に落ちてたんです。 
手首の甲の方だったのが幸いして、出血はそれほどでもありませんでしたが、傷口は深かったようでちょっと骨が見えていました。 

で、その様子をちょっと離れた所で見ていた私は、原因となった包丁が調理台からまた床に落ちそうになっていたので、あわてて駆け寄り包丁を手に取りました。 
刃先にはホールの子の血がついていたので、何も考えず人差し指の先で拭き取ろうと撫でたところ……。 

スーーッと刃先が指先をスライドして、指先の皮膚はもちろん肉まで切れてしまいました。 
痛みはもちろんですが、熱くて冷たかった感触は今でも思い出すたびゾッとします。