大阪の某社で勤めていたんですが、限界を超えた人は凄まじい行動に出る、というシーンを目撃したことがあります。
私はそれがトラウマで転職してしまいました。

当時の職場はプレスチックの成形工場でした。
プラスチック成形機の金型ってごぞんじですか?
その時の成形機は、大きな金型が左右からプレスされ、その中にプラスチックの原料を流し込み、金型が開くと成形された商品が出来上がる、というものでした。

大きさは2メートル近くあり、ほぼ自動で成形されるので人が触ることはほとんどありませんが、事故がないように成形機の周囲は安全柵で囲まれています。

その日、一緒のラインにいた先輩は、何を思ったのか金型の間の入り込みました。
中で製品がはりついたのかな?と思って、
「どうしたんですか?」

と声をかけた時気づいたんです。
先輩は自分で安全柵を閉めていたことに。
その瞬間、先輩は巨大な鉄の成形機に左右から挟まれてしまいました。

ズー、ズシュー、メキメキメキメキパキブシュー。

とっさに他の工員も手元にあった非常停止ボタンを手当たり次第押しました。
私はぴったりと閉じてしまった金型をみて、たぶんもう生きてはいない事を知っていました。
しかし開けない訳にはいかず、でも開ける勇気もなく…。
そのジレンマに主任に泣きついていました。
主任は工場長を呼び、そして現場にいた人達を全員工場から退去させて機械を操作しました。
工場長の嗚咽とも悲鳴ともとれる声がしました。
救急と警察の方がきましたが、警官の方は開け放たれた機械をみるなり、口から嘔吐物をぼろぼろとこぼしながら工場の外へと走っていきました。
その時ドアからちょっとだけ見てしまったんです。
そこにはまだ人間の名残をわずかに残した塊がありました。
私はその後失神したそうです。

先輩は一体どういうつもりだったのか。
事故なのか?意図的なのか?
今でもまだ夢に見ます。