2年ほど前、喉の奥が腫れて、痛みは激しいわ、熱は出るわで非常にしんどい思いをしました。
最初は風邪かと思って内科に行って抗生物質を呑んだのですが、一向に収まらず、終いにはしゃべるのもままならなくなったので、専門の咽喉科に行ったところ、

「なんでこんなになるまで放っておいたんだ!下手したら呼吸がふさがれて死んでたよ!?」

と怒鳴られました。

先生が言うには雑菌が入ってしまい、その部分が膿んで腫れているとのこと。

「ら、らっへ、はへはほ思っへへ…(だ、だって、風邪と思ってて…)」

意味不明な私の言葉をなんとなく理解する先生。

「風邪は、内科じゃないの!咽喉科で見るの!!…とにかく膿を抜くからこっちに来て」

痛いし先生には怒られるし既に半泣きの私。
とりあえず先生の後について処置室に行きました。

「じゃあ、口から注射器入れて患部の膿を抜くから」

…え? 今さらりと何をおっしゃいました?

思わず硬直した私の背後に2人の看護婦さんがすっと立ち、

「はーい、お口を大きく開けてくださいね~、麻酔塗りますよ~♪」

と両脇から体を抑えられました。
思いっきり動揺している私の口を、看護婦さん達は実に手際よくこじ開けました。

「ま、まっへふらはい・・・!(ま、待ってください・・・!)」

何て言っても待ってもらえるわけありません。
大きく腫れ上がった喉に、脱脂綿にしみこませた麻酔薬が塗られました。

「あはは、もっと酷かったらメスで切開するとこなんですよぉ~」

そんなん慰めにもなりません。

一方、先生は淡々と「太すぎる注射器」に注射針を射して用意を進めます。
麻酔の効き具合を確かめ、そして私の口に手をかけました。
反射的に身を引こうとしたのですが、そこは先生方も重々承知。
先ほどからスタンバイしていた看護婦さん達がすごい力で肩を身動きしないように押さえつけ、顎をがっちり固定しました。
もう、逃れられない…。頭の片隅でそんなことを考えました。
迫る注射針。
その先端がきらんと光ったような気がしました。

…あがーーー!!

心の中で叫びました。
そして実際に泣きました。私、29歳にもなって泣きました。
だって、すんごい怖かったんですもん。
処置後、血とよだれと涙を垂れ流し、ぐったり疲れた私に先生は心なしか楽しそうに注射器を見せてくれました。

「ほら、こんなに膿が溜まってた。大分楽になったでしょう?」

「――そうれ(で)すね・・・」

確かにさっきまでは膿が邪魔をするせいで満足にしゃべれなかったのが、割とスムーズにしゃべれるようになりました。
もっと痛いこともたくさんあるとは思いますが、とりあえず私の病院で泣き叫んだ体験です。